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東京家庭裁判所 昭和41年(家)8567号 審判

申立人 佐藤やすえ(仮名)

相手方 佐藤定雄(仮名) 外一名

参加人 金山貴美子(仮名) 外二名

主文

申立人に対し、昭和四二年三月以降申立人の生存中、

相手方佐藤定雄は一ヵ月金六、〇〇〇円を、

相手方佐藤義則は同金七、〇〇〇円を、

参加人金山貴美子は同金三、五〇〇円を、

参加人高田幸子は同金三、五〇〇円を、

それぞれ毎月末日限り、持参又は送金して支払え。

理由

一  、申立の趣旨

申立人の肩書住所には約一四〇坪の借地上に約四〇坪の家屋が所在しているが登記簿上は約二〇坪づつ二戸の建物として登記がなされ、西側半分の一戸は申立人の長男である相手方佐藤定雄(以下単に相手方定雄と称する)の、東側半分の一戸は申立人の三男である相手方佐藤義則(以下単に相手方義則と称する)の各所有名義をもつて登記がなされているが、使用状況は事実上の一棟を二戸にしきり、その所有名義とは逆に、相手方定雄が東側の相手方義則名義の部分に居住しており、申立人はその西側の相手方定雄名義の部分に居住し、申立人の四女参加人佐藤静子(以下単に参加人静子と称する)と共に生活して参加人静子に身の廻りの世話をして貰つている。ところが、参加人静子は間もなく結婚の予定で、同人が家を出ると申立人を世話する者もいなくなるので、申立人は三女である参加人高田幸子夫妻を申立人方に同居させ申立人を扶養して貰いたいが、相手方定雄夫妻はこれに反対している。一方申立人は相手方定雄の妻とも折合いが悪いため、相手方定雄夫妻と同居して同人の扶養を受けることは困難である。よつて申立人の生活について不自由のないよう、参加人高田幸子がその家族とともに申立人方において申立人と同居し、申立人を扶養する旨のとりきめを求める、というにある。

二、当裁判所の判断

(一)  手続上の問題

(1)  申立人は相手方定雄、同義則に対し前記趣旨の調停を申立て(当庁昭和四〇年(家イ)第五二二二号)、右調停手続において、申立人はその三女である参加人高田幸子の家族との同居を希望したのに対し、相手方定雄は終始、肩書住所に参加人高田幸子の家族が移つて申立人の世話をみることには反対し、むしろ相手方定雄において引取るべき旨主張して譲らなかつたため調停は不成立となつたことは当裁判所に顕著なところである。

ところで、申立人の調停申立の趣旨が必ずしも明瞭でないので右申立が、調停不成立により乙類扶養審判手続に移行したかどうかが疑問となるので、この点について考えてみる。

当事者のなす調停申立に対して、なるべく裁判所による適切な救済が与えられるよう、その意図に従い、趣旨を善解すべきところ、申立人は、調停申立書において、申立人が参加人高田幸子らと同居することを求めているがそれも、参加人高田幸子との間でなく、申立人と相手方定雄及び相手方義則との間でとりきめたいとの申立であるから、結局申立人の本件調停申立の趣旨は、被扶養者たる申立人と、主たる扶養義務者たる相手方らとの間で申立人の扶養に関する協議に代わる審判を求めている趣旨と解せられ、その趣旨に照らすと、相手方ら所有の家屋における参加人高田幸子との同居という条件も究局的には扶養の方法に関する申立と解せられるから、申立人の本件調停申立は、調停不成立により、当然、家事審判法九条一項乙類八号の扶養に関する処分を求める審判手続に移行したものと解すべきである。

(2)  本件申立について扶養審判をなすべきものとするときは、扶養義務者全員の扶養能力を勘案して、扶養義務の具体的内容を形成すべきものと解せられるから、当裁判所は、職権をもつて、申立人の二女参加人金山貴美子三女参加人高田幸子、四女参加人佐藤静子を参加せしめた。

(二)  認定される事実

本件記録中の戸籍謄本六通、申立人及び相手方定雄、同義則、同参加人金山貴美子、同高田幸子、同静子ら各本人審問の結果並びに当裁判所調査官小林赫子の調査報告書三通、その他の疏明書類一切を綜合すると、次のとおりの事実が認められる。

(1)  申立人は本年六三歳、生前大工をしていた亡中村為二の妻で、夫は昭和二五年死亡した。申立人と亡夫との間には三男四女があつたが、二男長女は死亡し、現在長男相手方定雄、三男相手方義則、二女参加人金山貴美子、三女参加人高田幸子、四女参加人静子がある。申立人は高血圧とリュウマチのため手の上げ下げに不自由を感じ、一年に一回位相当期間寝込むことがあり、独り暮しには不安を感ずる健康状態にあり、また収入はない。現在主として参加人静子が勤めて得る月給と、相手方義則からの仕送りで、三女静子との生活を支えている。申立人の現在居住する亡夫名義の借地上の建物は夫死亡後二分の一づつを相手方定雄、相手方義則に所有権移転登記をしたが、申立人は多分に亡夫からの遺産という考えが強いのに対し相手方定雄は自己の労働により取得した財産という意識を有している。このような家屋を二つにしきり、申立人は西側相手方定雄名義の部分に、相手方定雄は東側相手方義則名義の部分にそれぞれ別世帯として居住しているが、申立人は相手方定雄夫妻と折合が悪く、相手方定雄に引取られることには強く反対している。

(2)  申立人の長男相手方定雄は現在四三歳、小学校長の娘と結婚し、妻との間に長男(一〇歳)長女(六歳)があり、大学工学部を卒業し、技術者として会社に勤務し、月給及び賞与を平均すると、月平均六万円以上を得ている。結婚前は、相手方定雄は長男として申立人及び弟妹の扶養の責任を果たしてきたが、結婚後、生育した環境の異なる妻と姑とは折合が悪く、いわゆる嫁姑、小姑の対立が始まり、結婚後間もなく申立人とは別世帯となり、昭和三五年頃からは、はつきりと仕切りを設けて生活するようになつた。その後は、相手方定雄の持前の硬い性格に加うるに、妹達が自立できない間は同人ができるだけの援助を惜しまなかつたのに妹達がそのことに感謝の意を示そうとしないどころか、申立人に加勢したことから相手方定雄夫妻の妹達に対する反目も手伝つて、申立人との溝は一層深まるばかりとなつた。相手方定雄は参加人高田幸子に対しては特に強い対立感情を持ち、同一敷地内の同一屋根の下で参加人高田幸子夫妻と共に生活することは絶対不可能という態度を示し、殊に親族間の感情の葛藤の中に子供をまき込ましたくないとしている。にもかかわらず長男である相手方定雄が申立人をみると主張しているが、それも、相手方が肩書住所に所在する建物一棟全部を相手方定雄の所有として使用することが同人の社会的地位上、また従来家族に対する貢献度からして当然とする考えに基くもので、必ずしも申立人に対する孝養の念に出るものでなく、むしろ相手方定雄は終始申立人に対する根強い対立感情を有し、拒否的態度を固持している。

(3)  申立人の三男相手方義則は本年三五歳、結婚して妻との間には一歳の長男がいる。長男同様大学工学部を卒業し技術者として会社に勤務し、妻所有の家に居住しており、賞与月給を含めて月平均六万円以上を得て、比較的余裕のある生活をしている。従来から、申立人に対しては毎月金一万円づつを支送つているが、今後も、申立人に対しては出来るだけの経済的負担をしようと考えてはいるものの、引取扶養については必ずしも積極的ではない。むしろ申立人は現在居住の家屋を更にはつきりと仕切つた上参加人高田幸子の夫が家屋の所有権を取得した上、申立人を引取扶養するのが最善の策であると考え、その実現のためには自己の所有権を有する部分を相手方定雄の所有権を有する部分とを交換の上、飯塚にその所有権を譲渡してもよいとし、家屋所有権の問題についての根本的解決が困難であるときは、現状のまま申立人に対する経済的な扶養義務を果たしたいとしている。

(4)  参加人金山貴美子は、結婚しており、夫との間に六歳の長男があり、肩書住所所在の公団住宅に居住している。夫は会社員で俸給と賞与を含めて月収を平均すると金四万五、〇〇〇円を得ているが、それ程生活のゆとりはない。事情によつては申立人を引取つて扶養してもよいが、申立人が気兼ねなく暮すには現在のままがよいとし、その場合申立人の生活費の一部を負担することには異存はない。

(5)  参加人高田幸子は結婚し、夫との間に三歳になる長男がいる。同人の夫は会社員で俸給、賞与を含めて月収平均五万円以上を得ており、肩書住所の公営住宅に居住している。申立人は参加人の夫高田と気が合うため参加人夫妻と一緒に暮したいと考え、参加人夫妻も申立人が病気の際など従来泊りがけでよく面倒をみており、申立人と住むなり、申立人を引取るなりすることに異存はない。ただ申立人居住の家屋に申立人と住むについては、相手方のいずれからか家屋の所有権を買取らないかぎりは将来の住居が不安定になるのではないかという危惧から申立人方に移ることには躊躇しており、むしろ申立人を参加人方に引取ることに積極的であるが、現在の住宅は手狭のため引取は事実上困難な状態にある。

(6)  参加人静子は信用金庫に勤務し、月給約二万三、〇〇〇円を得ているが、申立人の扶養について結論が出ないため結婚できない状態にあり、一日も早く申立人の扶養についてとりきめのなされることをのぞんでいる。

以上の事実が認められる。

(三)  具体的扶養義務の存否

(1)  上記認定の事実によれば、申立人が年老いた母として収入もなく、しかも動作が不自由のため扶養を必要とする状態にあることが認められ、相手方定雄、同義則、参加人金山貴美子、同高田幸子、同静子が申立人の直系卑属として抽象的に扶養義務を負うことは明らかである。

(2)  そこで、相手方、参加人らに具体的扶養の義務があるかどうかについて考えてみる。

親族扶養における具体的扶養義務は、扶養義務者の職業、社会的地位に応じた文化的生活をした上で、経済的余裕がある場合に、負担すべきものと解され、相手方らの生活にこのような経済的余裕があるときには申立人の扶養を命ずることが可能となるわけであるが、このような意味における経済的余裕の有無は親族的扶養関係に共通の客観的基準によりこれを判断すべきものと考えられる。このような扶養義務者の経済的余裕測定の客観的基準として、まず、生活保護法による生活保護費を基準とする方式が考えられるがこの方式では生活保護基準が低きに過ぎ、文化的生活の経済的余裕をはかるには不完全かつ不適当であり、また、総理府統計局または東京都経済統計主管課の実施している勤労者世帯の家計調査の結果を基礎とする方式では、その調査が相当高額所得者も含めた調査対象としている嫌いがあつて、比較的高い値いが出ているため、これまた文化的生活の最低限度を知るための基準となり難い点もある。そこで、この中間的な方式として、いわゆる労研方式、すなわち、平均的家族の健康にして文化的な生活を営むに要する最低生計費はいくらかという見地から、労働科学研究所が厚生省の委託により昭和二七年、八年に行なつた労働者家族の生計費実態調査に基づいて算出した「最低生活費消費単位」を基礎として、特定の家族の最低生活費を算出し、生活程度及び経済的余裕の有無を測定する方式が相当であり、経済的余裕及び必要生活費算定の基準として、実務上も広く採用されている方式である。従つて本件においても、この方式をもととして、相手方らの生活の余裕の程度を客観的に考察してみることとする。

計算の方法として前記労研の調査結果の統計及び消費単位表(別紙添付)をもとに、家族全体の総消費単位に対する消費単位一〇〇の割合を計算しかつその家族における消費単位一〇〇あたりの生活費を算出してみた上、労研の調査による一ヵ月消費単位一〇〇あたりの最低生活費及びそれをもとに算出した家族の総消費単位あたりの家族の最低生活費と比較してみる方法である。

(3)  ところが、参加人静子は前記認定のとおり未婚の若い女性であつて、結婚を控えており、独立の生活をしているものと認め難く、かつ今後将来にわたつて、その収入を継続するものと期待することはできないから、将来事情の変更によつて扶養可能の状態になる場合もあり得るとしても、現状においては負担能力算定の基礎が不安定である以上、同人に具体的扶養義務があるものとは認められない。

(4)  そこで参加人静子を除きその他の扶養義務者について、前述の方法により計算してみると、それぞれの値は次のとおりである。

ただし、計算の基礎としては、賞与及び俸給を別途に計算するわけにはゆかないので、前記認定のとおり、両者を含めた月収平均を基礎として計算してみよう。

(a) 相手方定雄の世帯

相手方定雄の月収が月六万円を下らないことは前記認定のとおりであるから月六万円として計算する。

消費単位………(本人)100+(妻)80+長男(60)+二男(45) = 285

単位100あたりの生活費60,000円×(100/285) = 21,050円(10円以下切捨で以下同じ)

(b) 相手方義則の世帯

相手方義則の月収が月六万円を下らないものであることは前記認定のとおりであるから、月六万円として計算する。

消費単位………(本人)100+(妻)80+(長男)40 = 220

単位100あたりの生活費60,000円×(100/220) = 27,270円

(c) 参加人金山貴美子の世帯

参加人金山貴美子の夫の月収が月平均四万五、〇〇〇円を下らないものと認められることは前記認定のとおりであるから月四万五、〇〇〇円として計算する。参加人は内職している旨述べているが、その金額を確定できる証拠がなく従つて、夫の収入のみを計算の基礎とするため、参加人の消費単位も八〇として計算する。

消費単位………(夫)100+(本人)80+(長男)45 = 225

単位100あたりの生活費45,000円×(100/225) = 20,000円

(d) 参加人高田幸子の世帯

参加人の夫の月収が月五万円を下らないことは前記認定のとおりであるから、月五万円を基礎に計算する。

消費単位………(夫)100+(本人)80+(長男)40=220

単位100あたりの生活費50,000円×(100/220) = 22,720円

(e) 労働科学研究所の調査に基づく最低生活費

労働科学研究所の昭和二七年の調査によると、消費単位一〇〇あたりの最低生活費は七、〇〇〇円であつたとされているから、これに当裁判所の調査により認められる昭和四一年末における物価指数にスライドさせて、昭和四一年年末におけるイ、消費単位一〇〇あたりの最低生活費及び、ロ、消費単位数の最も高い(a)の消費単位二八五の生活費を計算してみる。

イ、7,000円×(昭和41年末の物価指数10.55/昭和27年調査時の物価指数600) = 12,300円

ロ、12,300円×(285/100) = 35,000円

(5)  以上(a)ないし(d)に算出した各扶養義務者世帯消費単位一〇〇あたりの生活費を(e)イの最低生活費(個人消費単位一〇〇について一二、三〇〇円)と比較した場合、(a)ないし(d)はいずれもかなり(e)よりも高く、相手方らの月収は、(e)ロ認定の世帯最低生活費よりいずれもかなり高額であることが認められるので、客観的基準よりみて、相手方らに経済的余裕があるものと認めることができる。

以上によつて、相手方定雄、義則、参加人金山貴美子、参加人高田幸子はそれぞれ申立人を扶養する具体的義務を負うものと認められる。

(四)  扶養の方法及び程度

(1)  申立人にとつて、扶養義務者らと同居して身の廻りの世話をして貰いたいということが、差迫つた要求であることは前述のとおりであるから、まず、扶養の方法として、引取扶養によるべきかどうかについて考えてみよう。申立人はまず参加人高田夫妻が申立人方に同居して申立人を扶養すべきことを求めているけれども、参加人高田夫妻が申立人居住の同家屋に居住するについては、正当な権限に基づいて居住しうる、即ち右家屋の所有権あるいは賃借権を取得し得る保障がない限り、同人らが右家屋に移転しても、相手方定雄から明渡請求を受けて、結局、住居の安定を失なうことになるかも知れず、もつて参加人高田の家族全員に過大のぎせいを強いる結果となるから、申立人の扶養の方法として参加人高田にこのような自己の全生活をぎせいにする程の過大な義務を課することは、妻と未成熟子の扶養を老人扶養に優先させようという近代扶養法の理念に反し、許されない。

そこで、申立人を各扶養義務者のうち、誰が引取扶養すべきかについて考えてみるとまず、相手方定雄との回居については、前記認定のとおり、従来申立人との間に感情的葛藤のあつたことから推して、昭和三五年以来両者を隔てた物理的障壁をとり除くことには双方大きな抵抗を感じるであろうことは容易に予測されるところであるばかりか、両者の心理的障壁を溶解することは一層困難なことが推認され、しかも心理的葛藤の解決されないままの形での同居は申立人に身体的不自由以上の精神的苦痛をもたらし、その意思と著しく反する結果になるものと考えられるので、相手方定雄に申立人の引取扶養を命ずることは適当でない。相手方義則夫妻、参加人金山夫妻も相手方定雄とは多少異なるニュアンスではあるが、いずれも申立人の引取にそれ程積極的でないことは前記認定のとおりであるからいずれも考慮の外におくとして、前記認定の事実によれば参加人高田夫妻が最も申立人の引取に積極的であり、申立人もそれを望んでいるが、参加人高田夫妻の居住する現在の家屋は手狭で現在申立人を引きとる部屋の余裕はないことが認められるので、現状においては相手方高田幸子に申立人の引取を命ずることも適当でない。もつとも前記認定の事実によると、高田は、土地を所有し、家屋を建築する計画もあり、家屋を建築した時には申立人を引取り扶養することも可能であり、同人らもそのことを予定していることが認められるので、近い将来高田が家屋を新築したときには、改めて当事者間に申立人の引取について協議が必要となるであろうし、その際は申立人の心理的かつ身体的安定のためには、申立人自身が、従来の住居に居住することを固執しないことがのぞましい結果をもたらすものと考えられる。

以上、要するに現状において、各扶養義務者に対し、申立人の引取扶養を命ずることは妥当でないから、引取扶養の方法は採用しない。

然るときは申立人の具体的扶養の方法としては経済給付すなわち、申立人の生活費を相手方らの能力に応じて分担し、申立人に支給する方法によらざるを得ない。

(五)  相手方らの分担すべき扶養料

相手方らが、どの程度の扶養料を負担するべきかは申立人の必要度と相手方の負担能力とを勘案して定むべきものと考えられる。申立人の必要とする生活費は、申立人が独立して生計を営む点を考慮して前記認定の単位一〇〇あたりの最低生活費一万二、三〇〇円を基として、これに前掲各証拠により認められる持病のリュウマチの治療に月約六、〇〇〇円の費用を要すること、及び申立人は動作が不自由のため、かりに家政婦を雇えば相当の費用を要するが、相手方らはそれらの支出もやむを得ないとしていること、しかし一方では、参加人金山貴美子、同高田幸子、同静子らから事実上労務提供を期待し得ること、参加人静子を除く各扶養義務者らに経済的余裕のあることは前記認定のとおりであることなど、一切の事情を斟酌すると、相手方らの負担すべき申立人の生活費は月金二万円が相当であると判断される。この金額を相手方らの経済能力に応じて負担すべきことになるが、相手方らの経済能力は前記認定の各世帯の消費単位一〇〇当り生活費の比を単純化すると、

a(相手方定雄):b(相手方義則):c(参加人金山夫):d(参加人高田夫)=21;27;20;22

となる。ところが、参加人金山、参加人高田は夫の収入であつて、本人の収入でないから、客観的基準によることは困難であるが、同人らの生活程度はほぼ同程度であること、参加人ら本人が金三、〇〇〇円は支出可能と述べていること、しかしながら参加人らもできるだけの協力をしなければ結局は事実上参加人静子に重い責任を課する結果になることを考慮すれば参加人らの負担額はいずれも金三、五〇〇円が相当と認められる。そうすると残額一万三、〇〇〇円を相手方定雄、同義則が21:27:=7:9の比率によつて分担すべきことになるが、右比率は、前掲証拠により認められる相手方義則がひとり毎月一万円を申立人に仕送つていた事実相手方定雄の賞与は年間金三〇万円であること、従つて賞与を入れた月収平均は前記認定の六万円より余程上まわるものとなること、などを綜合すると、むしろ相手方定雄、同義則は6:7の比率によつて申立人の生活費を分担するのが妥当と考えられるので、相手方定雄は金六、〇〇〇円相手方義則は金七、〇〇〇円を分担すべきものと、判断する。

三、結論

よつて、相手方らは金銭給付義務を負うべきことが明白となつた審判時である昭和四二年三月以降毎月末日限り、前記認定の金額をそれぞれ、申立人方に持参または送金して支払うべきものとし、主文のとおり審判する。

(家事審判官 野田愛子)

(別紙省略)

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